原始地球の状態から考えるというアプローチにより、実験で生命体と思われるものを生み出すことに成功した、川田薫博士。物理学者から見た生命と魂は、いったいどんなものなのか。6月13日(土)に開催されるセミナー「タガ外し大学」を前に、お話をうかがいました。

岩場の大木がくれたヒント

──川田博士が生命体について研究しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

私は独立する前、ある会社で研究をしていて、そのままその会社にいれば、研究者全体を束ねることになるはずでした。いい話と思うかもしれませんが、私はそれが嫌だったんです。

なぜなら、研究者全体を束ねる立場になったら、会社側の姿勢で研究者たちと対峙することになるからです。性格上、それはとてもじゃないけどできないので、自分から辞めざるを得なくなりました。

ただ、それまではその会社に骨を埋めるつもりでしたから、高い給料をもらっていても、お金は全部使ってしまっていたんです。さらに、10年以内に辞めると退職金がほとんど出ないというのも知らず、無一文に近い状態になりました。

そんな中で、これからどう生きるかを考えました。自分がなすべきことを見つけたい。ぐるぐると考えながら夢遊病のように三陸海岸を歩いていたら、岩場に大木が生えていたんです。なんだこれはと思って、ふと根に目をやると、その部分は、根なのか岩なのかわからないような状態になっていました。

その木は、根から何かを出して、岩場を溶かして成長したと考えられます。つまり、岩(石)には生物を成長させる力がある。これはすごい。石を使えば生物がガラリと変わるようなことができるに違いないと確信しました。

これが、石と生命体の関係にのめり込んでいったきっかけですね。

岩石ごとに持っている機能が違う

──それから、岩石の研究をスタートされたんですね。

どんな石がいいかは見当がついていたので、すぐ石を集め始めました。お金はないですから、これまでの知人を頼ってかき集めるしかありません。ただ、集めた石を並べても、種類が多すぎて困ってしまいました。

そこで、地球の表面にある代表的な石にターゲットを絞り、粉砕して調査していきました。

地球の表面は大きく、大陸層、海底層、マントル上部の3つに分かれます。大陸の代表的な岩石である花崗岩から抽出したミネラル液には、生理活性の機能があることがわかりました。生理活性とは、液につけると、生きているものが元気になるということです。

海底の代表的な岩石である玄武岩から抽出したミネラル液には、特別な油を溶かす、界面活性の機能がありました。

海底層の下にあるマントル上部の代表的な岩石、橄欖(かんらん)岩から抽出したミネラル液には、水を浄化する機能がありました。調べてみると性質が極端に違うので、面白いんですね。これを学問にしたいと思いました。

──岩石には、さまざまな機能があるのですね。生命体の誕生にも、岩石が関係しているのでしょうか。

さらに研究を進め、ミネラルの持つ機能がわかってくると、生命の誕生に挑戦したいという気持ちが生まれてきました。

世界中の科学者が生命の誕生に挑戦してきましたが、実現できなかった最大の理由は何だと思いますか。彼らが失敗し続けた理由は、みんな生命誕生のロジックを頭の中で考えて、その上で、それを実証しようとしていたからです。

そうではなくて、地球上で生命が誕生したと考えるなら、素直にそのときの地球の姿を想像すればいいというのが私の考えでした。つまり、原始地球に存在していた物質の相互作用で、生命が誕生したと考えるというアプローチです。

原始地球の表面には大陸があって、海があって、大気があって、太陽の光があった。この4つの作用で生命が誕生したのではという仮説を立てました。

そこから、要素をさらに単純化していきました。海はさまざまなものを溶かしこんでいて実態は複雑なので、単純に水と考える。大陸は鉱物と考える。鉱物と水の相互作用を、大陸と海の相互作用と捉え返すということです。

そうすると、純水の中に、鉱物の超微粒子が溶け込んだものが、海だと考えられます。そこに大気が溶け込んでくる。いまは窒素と酸素が多いですけど、他の惑星の大気組成から考えると、原始地球の大気は水素と炭酸ガスと考えられます。

海に水素と炭酸ガスが溶け込んで、そこに陽の光が当たる。そうすると、一部の炭酸ガスはC(炭素)とO(酸素)にわかれる。水も一部、H(水素)とO(酸素)にわかれます。

つまり、有機物の根源となる物質は全部あるということです。そこに、大陸の代表的な岩石である花崗岩の抽出ミネラル液で光化学反応させると、思った通り、無機物からアルコール(有機物)ができました。やっぱりそうじゃないかと思いましたね。

石油も岩石からかんたんにつくれる

海底層の代表的な岩石・玄武岩の中に、輝石というちょっと変わった石があります。カルシウムが多いのが特長なんですが、そこから抽出溶液をつくって何ができるか調べたら、今度は芳香族炭化水素という有機物、つまり、石油のもととなる物質ができました。石油は微生物由来と言われていますが、このことから、私は岩石由来だと考えています。

水に溶け込む鉱石によって、無機物からできる有機物が変わる。面白いですよね。そして、玄武岩の抽出ミネラル液からは、私たちの身体を構成する有機物が、ことごとくつくれることがわかったのです。

もう、興奮しましたよ。でも、たったひとつ、アミノ酸ができなかった。ただ、普通の観測装置では観測できないのですが、ごくわずかに、さまざまなアミノ酸がつくられていることも、その後わかりました。

アミノ酸があって、有機物群があれば、タンパク質はすぐできます。こうなると、生命の誕生は目と鼻の先だと考えられました。

後編に続く)

セミナー情報

「タガ外し大学」こころのタガを外し、自由に生きよう。
講師:川田薫(理学博士)
日時:6月13日(土)13:00〜16:30(受付12:45より)
会場:HSB鐡砲洲会議室(八丁堀駅前)/中央区湊1-1-12
地図はこちらから
入場料:前売り券3000円(ネット購入)/当日券4000円
お申し込みはこちらから

プロフィール

川田薫(かわだ・かおる)
東京理科大学物理学科卒、東京大学地震研究所、東京大学物性研究所を経て、三菱金属中央研究所に入所。科学技術省、通産省などの評価委員、研究員を歴任後、昭和63年に独立し、川田研究所を設立。様々なミネラルの作用を発見し、ミネラルによる土地改良で、低農薬、無農薬農業を推進。実証という科学的立場から生命や魂を探求し、新しい科学技術として発展させようとしている。